外国人を雇用する際、在留カードのコピーを受け取っただけ、あるいは在留カード原本を目視しただけで確認を終えていないでしょうか。

近年は、真正な在留カードと外観上ほとんど見分けがつかないほど精巧な偽変造在留カードが確認されています。さらに、実在する有効な在留カード番号を悪用した偽造カードも存在するため、「在留カード等番号失効情報照会」で「失効していません」と表示されたことだけをもって、そのカードが真正であると判断することもできません。

そして、偽造在留カードを提示した外国人を結果的に不法就労させてしまった場合、企業側が「偽造とは知らなかった」と主張すれば当然に責任を免れるわけではありません。

外国人を雇用する企業は、「在留カード原本の確認」+「在留カード等読取アプリケーションによるICチップ確認」+「失効情報照会」を一連の確認手順として社内で運用することをお勧めします。

なお、読取アプリを使用しなかったことだけで直ちに「過失」が認定されると入管庁が明示しているわけではありません。ただし、入管庁は在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れないと案内しており、現在の外国人雇用管理指針では、読取アプリによるICチップ情報と在留カードに記載された情報の照合が「適切」と明記されています。

目次

  1. 偽造在留カードは目視だけでは見抜けない
  2. 「知らなかった」でも不法就労助長罪のリスク
  3. 在留カード等読取アプリとは
  4. 外国人雇用管理指針にも読取アプリを明記
  5. 企業が行う在留カード確認手順
  6. 失効情報照会だけでは不十分
  7. 派遣外国人を受け入れる場合
  8. よくある質問
  9. まとめ

偽造在留カードは目視だけでは見抜けない

出入国在留管理庁は、近年の偽変造在留カードについて、カード表面・裏面の偽造技術が精巧化していることに加え、有効な在留カード番号を使用した偽変造在留カードの作成事案も発生していると説明しています。

そのため、カードの材質や印刷状態を目視するだけでは、真正な在留カードと偽造された在留カードを判別することが困難な場合があります。

有効な在留カード番号が偽造カードに使われるケースも

特に注意したいのが、実在する別人の在留カード番号を流用した偽造カードです。

このようなカードについて番号だけを照会した場合、番号自体は実在するため、「失効していません」と表示される可能性があります。入管庁も、失効情報照会の結果は在留カード自体の有効性を証明するものではないと注意喚起しています。

「失効していません」=「この在留カードは本物」という意味ではありません。

「知らなかった」でも不法就労助長罪のリスク

入管法73条の2は、不法就労活動をさせた者等を不法就労助長罪の対象としています。

ここで企業が特に注意しなければならないのは、外国人が不法就労者であることを知らなかった場合であっても、企業側に過失があれば処罰を免れない点です。

出入国在留管理庁は、事業主向け資料やQ&Aにおいて、在留資格の有無や在留カードを確認していない等の過失がある場合には、処罰を免れない旨を明確に案内しています。

したがって、本人から提示された在留カードが偽造されたものであり、企業がそのことを認識していなかったとしても、企業側がどのような確認を行っていたかは重要な問題となります。

不法就労助長罪の法定刑

現在:3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科
令和9年4月1日以降:5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科

在留カード等読取アプリとは

出入国在留管理庁は、偽変造在留カード対策として「在留カード等読取アプリケーション」を無料で提供しています。

このアプリは、在留カードに内蔵されたICチップ内の氏名や顔写真等の情報を読み取り、その情報と在留カードに印字された内容を見比べることで、偽変造の有無を確認するためのものです。

  1. 在留カードの名義人本人の同意を得る
  2. 在留カード原本をアプリで読み取る
  3. ICチップから読み取った氏名・顔写真等を確認する
  4. アプリ上の表示と、実際の在留カードに記載された情報を照合する

在留カードに記載された情報とアプリで読み取った情報が異なる場合や、アプリが正常に作動しているにもかかわらずICチップを読み取れない場合には、偽変造の可能性があります。入管庁は、そのような場合には最寄りの地方出入国在留管理官署へ問い合わせるよう案内しています。

外国人雇用管理指針にも読取アプリを明記

令和8年6月14日から適用された改正「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」では、外国人雇用状況の届出事項を在留カードにより確認する場合について、本人の同意を得た上で在留カード等読取アプリケーションを使用し、ICチップに記録された情報と在留カードの券面の記載を照合することが適切である旨が明記されました。

読取アプリの使用それ自体について、「使用しなければ直ちに罰則が科される」という罰則付きの義務が設けられたわけではありません。

しかし、入管庁が不法就労防止のために読取アプリの利用を案内しており、厚生労働省の指針においてもアプリによる照合が適切な確認方法として明記された以上、外国人を雇用する企業においては、読取アプリによる確認を社内の標準手順に組み込んでおくことを強くお勧めします。

企業が行う在留カード確認手順

弊所では、偽造在留カードによる不法就労を防止する観点から、少なくとも次の確認を社内手順として定めておくことを推奨しています。

在留カード確認チェックリスト

  • 本人から在留カードの原本の提示を受ける
  • 本人の同意を得る
  • 入管庁の在留カード等読取アプリケーションで原本を読み取る
  • アプリに表示された氏名・顔写真等と在留カードに記載された情報を照合する
  • 在留カード等番号失効情報照会も併せて行う
  • 表示内容に相違がある場合や、正常な環境でICチップを読み取れない場合は入管へ確認する
  • 確認日・確認者・確認方法を社内で記録する

なお、令和7年11月14日以降は、在留カード等読取アプリから失効情報照会を利用することもできるようになっています。

在留カードのコピーやスマートフォンで撮影した画像だけではICチップを読み取れないため、偽造対策という観点では、本人から原本の提示を受け、企業側でその場で読取アプリを使用する運用が重要です。

失効情報照会だけでは不十分

在留カード確認では、「何を確認したか」を区別して考える必要があります。

コピー・画像のみ

ICチップを確認できず、偽造対策として不十分です。

原本を目視するだけ

精巧な偽造では、外観だけで判別できないリスクがあります。

失効情報照会のみ

実在する有効な番号を流用した偽造カードを見抜けない可能性があります。

原本+読取アプリ+失効情報照会

企業の標準確認手順として推奨します。

ポイント:失効情報照会は重要ですが、それだけで在留カードそのものの真正性が証明されるわけではありません。読取アプリでICチップ内の情報と在留カードに記載された情報を照合することが重要です。

派遣外国人を受け入れる場合

外国人を直接雇用する場合だけでなく、外国人派遣労働者を受け入れる場合についても、偽造在留カードによる不法就労を防止する確認体制を整備しておくことが重要です。

もっとも、派遣先が個々の派遣労働者についてどの方法で直接確認するかについては、労働者派遣法上の取扱いとの関係も踏まえて設計する必要があります。そのため、派遣受入れの場合には、派遣元が在留カード原本・読取アプリ・失効情報照会等による確認を実施しているかを含め、派遣元と確認方法及び役割分担を明確にしておくことをお勧めします。

よくある質問

Q. 在留カード等読取アプリの使用は法律上の義務ですか?

アプリを使用しなかったことだけを理由として直ちに罰則が科されるという規定ではありません。ただし、外国人雇用管理指針では、本人の同意を得た上で読取アプリを使用し、ICチップ情報と在留カードに記載された情報を照合することが「適切」と明記されています。弊所では、外国人雇用時の標準確認手順として使用することを推奨しています。

Q. 失効情報照会で「失効していません」と表示されれば本物ですか?

いいえ。入管庁は、実在する在留カード番号を悪用した偽造カードも存在すると注意喚起しています。失効情報照会の結果だけでカードの真正性を判断することはできません。

Q. 在留カードのコピーを受け取れば確認として十分ですか?

偽造対策という観点では十分とはいえません。コピーや画像ではICチップを読み取ることができないため、原本の提示を受け、本人の同意を得た上で読取アプリを使用する運用をお勧めします。

Q. アプリの表示とカードの記載が違う場合は?

偽変造の可能性があります。入管庁は、そのような場合には最寄りの地方出入国在留管理官署へ問い合わせるよう案内しています。確認が取れるまで就労開始を見合わせるなど、慎重な対応が必要です。

まとめ|目視だけで終わらせない

偽変造在留カードは精巧化しており、外観だけでは真正なカードと見分けることが難しいケースがあります。

出入国在留管理庁は、不法就労者であることを知らなかった場合でも、在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れない旨を案内しています。また、令和8年6月14日からは、外国人雇用管理指針にも、在留カード等読取アプリケーションを使用してICチップ情報と在留カードに記載された情報を照合することが適切である旨が明記されました。

外国人雇用時の基本フロー

在留カード原本の提示 → 読取アプリでICチップ確認 → 失効情報照会

外国人を雇用する企業は、この確認フローを採用時の社内手続として定着させることをお勧めします。

Bring行政書士法人では、外国人雇用に伴う在留カードの確認方法や、不法就労防止のための社内確認体制に関するご相談も承っております。外国人の採用・派遣受入れに際し、在留カードの確認方法に不安がある企業様は、お気軽にお問い合わせください。

参考資料

  • 出入国在留管理庁「外国人を雇用する事業主の皆様へ」
  • 出入国在留管理庁「在留管理制度よくある質問」Q116・Q117
  • 出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」
  • 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」